東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻武田研究室

研究内容RESEARCH

光量子コンピュータとその応用

現在、次世代のコンピュータとして量子コンピュータが注目されています。光の量子に特有の性質を活かせば、室温・大気中で動作し、高クロック動作も可能なオールマイティの量子コンピュータが実現するだけでなく、従来技術を超える通信や計測技術などの可能性も開けます。私たちは、独自のアプローチで光量子コンピュータ開発を進めるとともに、その技術を利用した実用的アプリケーションを探索します。

テーマ1:ハイブリッド光量子情報処理

私たちは、光の粒・波の2面性を利用した量子情報処理の可能性を探求しています。光には、1個、2個と飛び飛びで数えられる粒子としての側面と、振幅や位相という連続的な値を持つ波としての側面があります。私たちは、片方の側面のみを利用する従来の手法から脱却し、両側面を積極的に活かすハイブリッドな手法に着目することで、従来不可能な新しい量子情報処理の可能性を追求します。

  1. S. Takeda, T. Mizuta, M. Fuwa, P. van Loock, A. Furusawa, Nature 500, 315 (2013).
  2. S. Takeda, M. Fuwa, P. van Loock, A. Furusawa, Physical Review Letters 114, 100501 (2015).
  3. M. Fuwa, S. Takeda, M. Zwierz, H. M. Wiseman, A. Furusawa, Nature Communications 6, 6665 (2015)

テーマ2:ループ型光量子コンピュータ

私たちはループ構造を持つ光量子コンピュータ方式を独自に考案し、その開発を進めています。従来の典型的な光量子コンピュータのボトルネックは、光回路の設計に拡張性・汎用性が乏しいことでした。これに対し、私たちの提案したループ方式は最小規模の光回路で大規模かつ多様な計算を実行できます。私たちは、この手法の開発を進め、あらゆる光量子情報処理のプラットフォームを提供することを目指します。

  1. S. Takeda & A. Furusawa, Physical Review Letters 119, 120504 (2017).
  2. S. Takeda, K. Takase, A. Furusawa, Science Advances 5, eaaw4530 (2019).
  3. Y. Enomoto, K. Yonezu, Y. Mitsuhashi, K. Takase, S. Takeda, Science Advances 7, eabj6624 (2021).
  4. H. Tomoda, T. Yoshida, T. Kashiwazaki, T. Umeki, Y. Enomoto, S. Takeda, Optics Express 31, 2161 (2023).
  5. K. Yonezu, Y. Enomoto, T. Yoshida, S. Takeda, Physical Review Letters 131, 040601 (2023).
  6. D. Okuno, T. Yoshida, R. Arita, T. Kashiwazaki, T. Umeki, S. Miki, H. Terai, M. Yabuno, F. China, S. Takeda, arXiv:2402.14372.
  7. T. Yoshida, D. Okuno, T. Kashiwazaki, T. Umeki, S. Miki, F. China, M. Yabuno, H. Terai, S. Takeda, arXiv:2403.11404.

テーマ3:光量子技術の実用的アプリケーション探索

私たちは最先端の光量子技術を実社会応用する方法を模索しています。光の量子性を活かした情報処理は、量子コンピュータにとどまらず、量子多体系の振る舞いを解き明かすシミュレーターや、従来の限界を突破する大容量光通信、超高精度なセンサーなど多岐にわたります。これまで私たちがハイブリッド量子情報処理やループ型光量子コンピュータの開発で培った独自技術を生かして、光量子技術の多彩なアプリケーションを探索します。

  1. Y. Enomoto, K. Anai, K. Udagawa, S. Takeda, Physical Review Research 5, 043005 (2023).
  2. K. Anai, Y. Enomoto, H. Omura, K. Nagano, K. Izumi, M. Endo, S. Takeda, arXiv:2305.06579.